様々なデリヘルの歴史とプレイ内容


様々なデリヘルの歴史とプレイ内容ブログ:2022年06月19日


「今日の14時ご飯、何がいい?」
あたしは父親に尋ねた。

「テキが食べたいのぅ」
テキというのはビーフステーキのことだ。
昔はビフテキと言っていた。
父親はそれをさらに短くテキと呼んでいたのだ。

魚釣りが趣味の85歳の父親だから、
焼き魚とか、煮物とかを想像していた。

「ビフテキかぁ、うふふふ」
あたしは意表を突かれて、笑いがこみ上げてきた。

父親は入院していた。しかも末期癌。
肉体中には特有の疼痛を抱え、
痛み止めも欠かせなかった。

根治することはもはや不可能で、
治療はもっぱら痛みをとることと、
延命を秤にかけるような綱渡り状態だった。

体力的にも
ある種の小康状態でいられる最後の段階だろうと言う。

主治医と相談して
思い切って自宅へ三日間の外泊を決めた。
その一日目に食べたいと言ったのがビフテキだった。

上等の牛肉を張り込んで2枚買ってきた。
満足そうに食べる父親の顔を見ていると、
思い切って帰ってよかったと心から思った。

そして、自宅療養最後の日…
父親が自宅で過ごす最後かもしれないという
厳しい現実には気づかぬふりをして、
あたしは尋ねた。

「今日は、何食べる?」
「お惣菜屋のコロッケがええのう。
アレならゴミも出んし、片付けもいらんしなぁ」

自宅で最後になるかもしれない食事に選んだのが、
お惣菜屋のコロッケ…

疼痛にいつ襲われるかわからない父親を
車で2時間かけて
病院まで送り届けなければならないという大仕事を控えている
ムスメを思う父親の選択だった。

父親は最期まであたしを思い、気遣い、
父親としてあたしを甘やかしてくれるというのだった。

あたしはこみ上げてくる何かをこらえるのに
これほど苦労したことはなかった。


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